ひそやかな秘めごとに溺れて
成美(30代前半・看護師 / 相手は淳さん(子どもの習い事の講師)
一度だけ、のつもりで、後先を考えるのをやめてしまった。
夫とは、子どもが生まれてからときめくことも途絶えていた。
淳さんは子どもの習い事の講師。いい妻でいなきゃ、という建前が、崩れていくのを感じた。
夫と冷戦中のある夜、淳さんから飲みに誘われた。
自分でも意外なほど忘れられずにいるのは、冷めたコンビニおでんの、出汁の匂いだった。
離れたくない、その一心だった。
「まだ、離れたくない」
ここまで書いて、少し指が止まった。
指を絡めて握られ、私は泣きそうな声で訴えた。
唇が重なると、指の先がふわりと浮いた。
「成美、感じてる顔、そそるね」
下着をそっと脱がされ、「好き」と口走ってしまった。
タイツを引き下ろされ、声がふわりと浮いた。
内ももをくすぐるように触れられ、思ったことがそのまま声になった。
尖った乳首を焦らすようになぞられ、腰の奥がぞくりと粟立った。
膝の裏に熱を持った舌先を感じて、指先がぞくりと粟立った。
「ぁ…止まらないぅ…」
「成美、反応、そそるね」
敏感な芽を円を描くように擦られ、私は「だめ」と言いながらしがみついた。
淳さんが背中の中心を爪の先でなぞると、腰から下から力が抜けた。
鎖骨のくぼみをきゅっと摘ままれるたびに、背中がきゅうっと締まった。
「あっ…そんなにしないで…」
軋むヘッドボードしか聞こえないまま、胸の奥が甘く痺れた。
片脚を抱え上げられて深く繋がり、ずちゅずちゅと濡れた音が漏れ、爪先がこわばった。
(ぎゅっ、こく)
「くぅっ…もう無理…」
「濡れ方、反則だよ」
浅いところを焦らすように擦られ、私は「だめ」と言いながらしがみついた。
淳さんが最奥を抉るように穿つと、下腹の奥がびくりと跳ねた。
「もっと激しく…はぅっ…」
全身が硬直して、私はしばらく動けなかった。
「んあっ…もっと激しく、、、」
翌月、淳さんは遠くへ転勤していった。
女に戻れた数時間の代わりに、帰る場所が遠く感じた。
時間が経つほど、夫への嘘だけが増えていった。
今でも冷めたコンビニおでんの、出汁の匂いに出くわすと、時効にならない何かが疼く。