この日記帳に、名前はありません。番人である私も、名乗るつもりはない。そういう類いの場所です。
ここに並んでいるのは、どこかの誰かが——夫の寝息を数えながら、あるいは終わってしまった後の、やけに静かな天井を見上げながら——書き残していった夜の記録です。
「全部フィクションでしょう」。ええ、建前ではそういうことになっています。念のため申し添えると、掲載しているのはすべて創作で、実在の誰かの話ではありません。……ただ、フィクションだからといって、嘘だとは限らない。人が本当のことを書くのは、たいてい「作り話」という札を下げたときですから。
なぜ「動機」で分けるのか
世の中の同じような読み物は、たいてい「相手が誰か」や「どんな行為か」で棚を分けます。私はそれをやめました。
あなたが本当に知りたいのは、たぶん「何をしたか」ではなく、「どうして、してしまったのか」のほうだから。寂しさなのか、退屈なのか、仕返しなのか、それとも——もう一度だけ、女に戻りたかったのか。同じ過ちでも、入り口の気持ちが違えば、まるで別の夜になる。だからここでは、動機で扉を分けています。
自分の心当たりのある扉から、そっと開けてみてください。
読む前に、ひとつだけ
ここは18歳以上の大人のための場所です。それから——読んで、責めないこと。少なくともこの日記帳の中では、誰も裁かれません。夜くらい、自由でいいはずだから。