美…の記憶
美…(20代後半・会社員 / 相手は亮さん(昔の恋人)
下腹部にぬるりとした感触を感じて、わたしは短く彼の名を呼んだ。
ぶっちゃけ先走ってしまったけど、落ち着いて経緯を書く。
息苦しい家庭から逃げるように、その夜だけは、いい妻をやめた。
もう結婚してからずっと、触れられることが消えていたことに、慣れてしまっていた。
亮さんは昔の恋人。家庭を壊せない、という理性が、その夜だけ働かなかった。
夫の愚痴を聞いてもらううちに、亮さんに肩を抱かれた。
あれから手触りごと残っているのは、雨に濡れたコートの匂いを、行為より鮮明に覚えている。
強がりも、その手の前では無意味だった。
額を合わせたまま、胸の奥が震えて止まらない。
ブラウスのボタンを焦らすように外され、全身がこわばった。
ベルトをぷつりと外され、肩がひくついた。
背中の中心をくすぐるように触れられるたびに、こめかみが芯から蕩けた。
濡れそぼった花びらをつぷりと押し開かれ、わたしは理性を手放した。
首筋に容赦のない指を感じて、わたしはぶっきらぼうに腰を寄せた。
(くぷ、ぱちゃ)
「亮さん…あっ…イッちゃうっ…」
「美、乱れ方、全部見たくなる」
腰のくびれをねっとりと舐められ、つま先が勝手にくねった。
敏感な芽に遠慮のない愛撫を感じて、腰の奥がぞくりと粟立った。
膝の裏を強く揉みしだかれるたびに、わたしは背をのけぞらせた。
(とろり、ちゅっ、ぬちゅっ)
「あっ…溶けちゃうっ」
亮さんが浅い場所を焦らすように擦ると、つま先がふわりと浮いた。
リズムよく揺さぶられ、ベッドがきしむ音まで恥ずかしく響き、肩が勝手にくねった。
(とろん、じゅぷ)
「奥まで来て…ああっっ」
「美、全部欲しい」
一突きごとに体を揺らされ、首筋がびくりと跳ねた。
亮さんが最奥を抉るように穿つと、爪先がこわばった。
後ろから深く突かれ、ずちゅずちゅと濡れた音が漏れ、背筋から力が抜けた。
「亮さん…そんなにしないで…はぅ、、、」
頭の芯が痺れて、わたしは背をのけぞらせて固まった。
「はぅ…奥、離さないでっ」
「家庭は壊さない」が、二人の暗黙のルールだった。
バッグ、洗面台に置きっぱなしだったの今思い出した。
女に戻れた数時間の代わりに、後ろめたさだけが濃くなった。
時間が経つほど、普通の顔で会い続けるのが罰だった…
似たような場面で雨に濡れたコートの匂いに触れると、後悔と未練が同じ顔で並ぶ。