嵐の晩の余韻
七海(30歳・パート主婦 / 相手は翼さん(同じマンションの住人)
産後ずっと女扱いされなかった反動で、止まる理由が、思いつかなかった。
この家では、女として見られることなんて思い出せなくなっていた。
翼さんは同じマンションの住人。本能で危ないと感じる相手だと、それでも連絡が来るだけで浮き立った。
引っ越しを手伝ってもらって、片付いた部屋で二人、缶ビールを開けた。
今も手触りごと残っているのは、相手の車の、嗅ぎ慣れない芳香剤が記憶の栞になっている。
心臓の音が聞こえてしまいそうで、それが怖かった。
時計は丑三つ時を回ってて、それだけはっきり覚えてる。
唇が重なると、膝の裏がふわりと浮いた。
「七海、乱れ方、色っぽいよ」
スカートのファスナーを焦らすように外され、腰の奥がじわりと蕩けた。
シャツのボタンをそっと外され、胸の奥が小刻みに震えた。
ベルトを焦らすように外され、腰がじわりと蕩けた。
背中の中心をつぷりと押し開かれ、私は小さく首を振った。
脇腹に遠慮のない愛撫を感じて、指の先がきゅっと縮こまった。
「やっ…全部あげる〜っ」
「もう限界?」
翼さんが鎖骨のくぼみを爪の先でなぞると、消え入りそうな声しか出なかった。
首筋を激しく掻き回され、指の先が波打った。
(じゅる、はぁっ)
「んぅ…待って、全部あげるっ…」
抜き差しを繰り返され、ベッドがきしむ音まで恥ずかしく響き、背中がずくずくと疼いた。
真上から腰を落とされ、下腹の奥が震えて止まらない。
濡れた水音が響くなか、指先が勝手に浮き上がった。
(ぴく、ずちゅん)
「翼さん…見ないで…はぅ…」
「もっと欲しがっていい」
リズムよく揺さぶられ、私は自分から腰を押しつけた。
翼さんが浅い場所を焦らすように擦ると、下腹の奥が小刻みに震えた。
二人分の乱れた息に混じって、お腹の底がずくずくと疼いた。
「恥ずかしい…くぅっぅ…」
きゅうっと締まった瞬間、涙が一粒こぼれた。
「翼さん…んっ…もう、奥まで来てっ」
子どもの寝顔を見て、急に涙が出た夜があった。
戻れない線を、自分から越えたのだと思う、終わらせ方が分からない…
今になって思うのは、満たされたぶん、渇きも深くなった。
…何かの折に相手の車の、嗅ぎ慣れない芳香剤を思い出すと、体の奥がざわりとする。
ちなみに飲んでたのはレモンサワー、たぶん何杯目。