彼の部屋での香り
里穂ちゃん(30代前半・在宅ワーカー / 相手は遼(仮)さん(SNSで知り合った年下)
夫への当てつけのつもりで、一線を越える言い訳を探していた。
この十年、求められることが遠い記憶になっていたことに、慣れてしまっていた。
遼(仮)さんはSNSで知り合った年下。相手も妻子持ちだと、それでも会うと胸が跳ねた。
夫が出張でいない週末、遼(仮)さんから「少し会えないか」と連絡が来た。
その日ほぼすっぴんで、正直それが一番恥ずかしかった。
窓の外でゆっくり回る観覧車の灯りが、あの夜と分かちがたく結びついている。
流されるなんて自分らしくない、と思っていたのに。
「調子に乗らないで」
そっと顎を掬われ、わたしは短く彼の名を呼んだ。
指を絡めて握られ、腰の奥がきゅっと縮こまった。
スカートのファスナーを焦らすように外され、背筋が小刻みに震えた。
スカートをじれったいほど焦らして脱がされ、つま先が波打った。
濡れた下着を引き下ろされ、息がわなないた。
濡れそぼった花びらを激しく掻き回され、こめかみがふわりと浮いた。
胸の先を舌先で舐め上げられ、「もう無理」と短く言った。
潤んだ奥に痺れるような刺激を感じて、声がずくずくと疼いた。
(ぴくぴく、とくん、ぬちゃ)
「んあっ…そんな、そこ弱いの……」
「里穂ちゃん、反応、たまらないよ」
鎖骨のくぼみを激しく掻き回されるたびに、腰が小刻みに震えた。
遼(仮)さんが首筋にそっと歯を立てると、腰から下がわなないた。
遼(仮)さんが背中の中心をきつく吸い上げると、肩がじんと熱を持った。
「遼(仮)さん…んっ…うそ、頭が真っ白っ…」
きしむマットレスの音を立てながら、声を殺す意味も感じなかった。
軋むヘッドボードしか聞こえないまま、胸の奥がひくついた。
片脚を抱え上げられて深く繋がり、ぱんぱんと肌のぶつかる音が響き、わたしは正直に声を上げた。
膝が、強張っている。
(ふるり、ぬちゃ、ぱちゃ)
「遼(仮)さん…やっ…そこ、溶けちゃう〜っ」
「声、ぐっとくる」
根元まで一気に貫かれ、ベッドがきしむ音まで恥ずかしく響き、胸の奥が勝手に浮き上がった。
遼(仮)さんが腰を強く打ちつけると、わたしは遠慮なく彼にしがみついた。
真上から腰を落とされ、背中が焼けるように熱い。
(ちゅく、とろん)
「焦らさないで…はぅ…!」
こらえていたものが弾けて、わたしは何も考えられなくなった。
「は…っ…見ないでっ」
いつしか、生活の面倒まで見てもらうようになっていた。
その日髪ボサボサで、正直それが一番恥ずかしかった。
満たされるほど、乾きが際立った、この熱の置き場所が分からない。
皮肉なことに、秘密がひとつ、重くなった。
今でも窓の外でゆっくり回る観覧車の灯りを思い出すと、無防備ではいられなくなる。
隣の部屋のテレビがうっすら聞こえてて、変に気が散った。