火照った火遊び
AB(20代後半・会社員 / 相手はN夫さん(隣の席の同僚)
女として扱われたい、という願いが、理性を溶かした。
いつからか、見つめ合うことが遠い記憶になっていたことに、慣れてしまっていた。
N夫さんは隣の席の同僚。相手も妻子持ちだと、それでも距離を詰めたのは私からだった。
夫と冷戦中のある夜、N夫さんから飲みに誘われた。
止め忘れた蛇口の、ぽたぽたという音が、あの夜と分かちがたく結びついている。
どうにでもなれ、って気分だった。
「考えるのは、あとでいい」
飲みかけのペットボトル、枕元に置きっぱなしだったの今思い出した。
髪をやさしく撫でられ、声を我慢する気なんてなかった。
「潤んだ目、反則だよ」
ワンピースの背中のジッパーを焦らすように外され、あたしは自分から唇を求めた。
肩紐をはだけられ、内ももがじんと熱を持った。
下腹部に熱を持った舌先を感じて、恥ずかしげもなく腰を揺らした。
N夫さんが膝の裏を爪の先でなぞると、耳の奥がとろけそうになった。
鎖骨のくぼみを熱い息でくすぐられ、爪先がふわりと浮いた。
(くちゅん、じん…)
「ひぅ…そんなにしないで…」
「AB、今日は離さない」
胸の先をじっくり吸い上げられ、こめかみがびくりと跳ねた。
N夫さんが耳たぶを指で押し広げると、背筋がじわりと蕩けた。
N夫さんが脇腹に指を沈めると、膝がわなないた。
(くちゅくちゅ、ぬちゅ)
「ひぁっ…気持ちいい…」
抜き差しを繰り返され、ぱんぱんと肌のぶつかる音が響き、恥ずかしげもなく腰を揺らした。
きしむマットレスの音が響くなか、お腹の底が強張った。
N夫さんが奥をずんと突き上げると、「もっと」と口が勝手に動いた。
(ずんっ、ふるっ)
「N夫さん…はぁっ…奥、イッちゃう……」
「AB、反応、見てられないな」
ベッドのきしみに頭を溶かされて、あたしはもっと、と素直にねだった。
小刻みに突き上げられ、あたしはシーツを握りしめた。
二人分の乱れた息を立てながら、うなじが勝手に浮き上がった。
(じゅる、んっ、はぁっ)
「あっ…待って、恥ずかしい……」
何度目かの波で、あたしは彼の腕の中でぐったりと脱力した。
「N夫さん…ふぁ…止めないでっ…」
一度きりのはずが、夫のいない昼にまた会っていた。
刺激で日常を忘れられて、嘘をつく回数が増えた。
それからずっと、自分がいちばん割り切れていなかった。
今でも止め忘れた蛇口の、ぽたぽたという音を目にすると、心臓が小さく跳ねる。