忘れられない私の部屋の逢瀬
瑠奈(40代半ば・主婦 / 相手は翼さん(行きつけの美容師)
息苦しい家庭から逃げるように——手を伸ばしたのは、私からだった。
しばらく前から、見つめ合うことが消えていたことに、慣れてしまっていた。
翼さんは行きつけの美容師。越えてはいけない一線だと、それでも会うと胸が跳ねた。
いやもうスマホに翼さんから深夜のメッセージが届いた。
飲みかけで温くなった缶コーヒーが、記憶の真ん中に居座っている。
スマホの充電が23%で、それだけ妙に覚えてる。
考えるより先に、体が動いていた。
「もっと、めちゃくちゃにして」
強く抱き寄せられ、私はもっと、と素直にねだった。
指を絡めて握られ、下腹の奥がずくずくと疼いた。
「上気した肌、色っぽいよ」
肩紐をはだけられ、耳の奥がとろけそうになった。
下着をずらされ、指先がひくついた。
脇腹を円を描くように擦られ、腰から下がわなないた。
膝の裏を舌先で舐め上げられ、肌がきゅっと縮こまった。
「あっ…恥ずかしいっ…」
「震え方、全部見たくなる」
翼さんが背中の中心に唇を押し当てると、爪先がわなないた。
尖った乳首に痺れるような刺激を感じて、背筋が震えて止まらない。
翼さんが敏感な芽に唇を押し当てると、膝の裏がとろけそうになった。
(ぬぷっ、ふるり、じん…)
「は…っ…変になる〜っ」
濡れた水音しか聞こえないまま、声が勝手に浮き上がった。
繋がったまま抱き起こされ、ぐちゅんぐちゅんと激しい音が鳴り、「もっと」と口が勝手に動いた。
頭がうまく回らない。
「翼さん…ひぁっ…全部あげるっ」
「瑠奈、とろけ方、たまらないよ」
ゆっくりと押し入られると、うなじがとろけそうになった。
一突きごとに体を揺らされ、ぐちゅんぐちゅんと激しい音が鳴り、声がぴくんと反応した。
「は…っ…変になる…!」
こらえていたものが弾けて、私は背をのけぞらせて固まった。
「んぅ…止めないで……」
後ろめたさから、夫の前でいい妻を演じるようになった。
求められた記憶が、日常を余計に苦しくした、罪悪感は消えてくれない。
てかさ、冷静になると、いちばん傷ついたのは自分だった。
不意に飲みかけで温くなった缶コーヒーを目にすると、あの熱がぶり返してくる。
喉が渇いてたのに、ウーロンハイを飲み干してたのを思い出す。